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2012-04-18

どポジティブ思考

前回のあらすじ:
鳥取城が秀吉に囲まれているころ、元春たちは後詰の兵を集めていた。
各地の境に抑えの兵を割くので思うように兵が集まらないまま鳥取は落城。
その報を聞いた元春は経家の弔い合戦を遂げようと、
馬野山辺で秀吉の進軍を待ち受けた。


伯州馬野山対陣のこと(下)

吉川駿河守元春は、嫡子の元長・三男の経言を連れて打ち出すと敵陣を見渡して、
「秀吉の勢は六万あまりと聞いていたが、聞いていたより数が少ないようだ。
四万以上にはなるまい。とはいえ、我らの十倍ほどはいる。
きっと秀吉は、我らを小勢と侮っているに違いない。
主将が敵に対して驕り高ぶるのは敗北の端緒になる。
今日はもう昼過ぎになった。おそらく一日は人馬の息を休め、また我らの陣の様子をうかがおうとするはずだ。
明日はこの陣に切りかかってくるだろうから、それを待ち受けて無二に秀吉の旗本へと切り入り、
この手で討ち取ってくれよう。
これほどの大軍、強敵に会ってこそ、私の日ごろの武勇が際立つものだ」と、
にっこりと笑って立っていた。

元春様は、すぐに後ろの橋津川にかかる橋をすべて引き落とし、
隠岐隠岐守清家・竹安杢允が乗ってきた警護船をすべて陸に引き上げて、櫓や櫂をすべて折ってしまった。
これはひとえに、皆で心を合わせてともに討ち死にしようという胸の内を、
士卒たちに知らしめるためであったという。

元春父子はいつも、弱そうな敵を相手にすると、凡庸な将が強敵に出会ったかのように恐れ、
逆に強敵を相手にすると、愚かな将が取るに足らない小さな敵を見て喜び勇むような調子であった。
このときもまた大いに志気を上げて、少しも臆した気配すらなかった。
この様子を見て、「なんと勇ましい強将だろう」と、敵も味方も思わず口をあんぐり開けた。

熊谷伊豆守信直は、これを見ると自分の子供に向かって、
「元春の態度はなんとすがすがしいことか。戦は兵の数でするものではないぞ。
ただ大将の強い心と、士卒の団結が肝要なのだ。
大将がとても剛強で、士卒もまた死を一途に思い定めている。
地形はというと、後ろに逃げ出せる道はなく、左右のどちらにも退却できない。
橋を落とし船の櫓櫂をも折ってしまった。
これは項羽が秦の軍と相対して、兵舎を焼き、釜を壊し、船を沈めたその考えと同じことだ。
また当然、韓信の背水の陣と同じである。
味方にとって悪い地形をそのまま悪い地形にしておくのは愚将のやることだ。
こうした悪地を好地にするのが良将である。
将といい、兵といい、場所といい、これは必ずこちらが勝つぞ」と大いに勇んだ。

するとこれを聞いていた者たちはますます気を奮い立たせ、
「もう死ぬものと思い定めて、一歩でも敵の方へと進み、手が動く限り、
命が続く限り戦い続けて、討ち死にしてやろう」と、前にもまして色めきたったようだった。

三沢三郎左衛門・嫡子の摂津守・三刀屋弾正左衛門、そのほか出雲・伯耆の国人たちは、
「秀吉は鳥取・丸山の城を攻め落とし、そのうえはなはだしい大軍で我々を見下ろす山の頂に出てきています。
勝に乗った強敵に味方は城を攻め落とされてしまい、意気消沈した小勢では、
なかなか思うような一戦もできはしないでしょう。
まずは急難を逃れて退却し、隆景と合流してからもう一度兵を集めて勝負を決しましょう」
と諫めようと話し合いで決まり、益田越中守元祥を先に立て、元春の本陣へと集まってきた。

国人たちが皆、「いかに剛強な元春とはいえ、あの大軍をまともに引き受けたら、
十の内十は味方が敗北するに決まっている。
その不安が外に漏れてくるだろうから、皆も機嫌をうかがったら引き揚げましょう」
と言おうと思っているところに、
元春様が浅黄の袴の裾もからげずに、いかにもゆったりとくつろいだ様子で出てきた。
あれこれととりとめもない話を心静かにしていたが、
「もう日も暮れてしまったな。晩飯を出せ」と元春様が言うと、
三尺ほどもある鮭があるところから献上されたので、それを料理した。
皆もこれを出され、「いつもより倍も美味い」と舌鼓を打った。

元春は口を開いた。
「こうして皆で炉の周りに集まって火を焚き、盃で濁り酒をあおっていると、
身を切るような寒さなど感じることもない。
でも秀吉は山の上に陣を構えているのだから、さぞかし寒風が肌身にしみるだろうよ。
敵の寒苦を思えば、味方はなんと安楽なことか」と言って、
なんとものんびりとくつろいでいるので、国人たちは思いがけないことだと思った。
なかなか「この陣を引き払ってください」とは言い出せないままで退出していった。

「さてさて、元春は智仁勇の三徳を全備した大将だとは知っていたが、まったく剛強な御仁であるなぁ。
周の武王は二万二千五百人の兵で、紂王の億万の衆に打ち勝った。
魏は五万の兵で秦の五十万の勢を破った。漢は三万の兵で楚の八万の衆を打ち砕いた。
これを考えれば、兵の多少で戦の勝敗が決するわけではない。
信長は臣の身でありながら君をないがしろにし、また天台山を焼き払い、
多くの信徒や関係のない者たちを殺したのだ。その悪行は夏桀・殷紂と同じである。
これから天の裁きを受けることになるだろうから、遠からず滅亡する。

今、信長の内衆で四天王として聞こえが高いのは、
まず羽柴筑前守秀吉・柴田修理亮勝家・惟任日向守光秀・滝川将監(一益)である。
この者たちは皆、勇は世に優れているけれども、仁の道は夢ほども知らない。
しかし元春・隆景は武勇に優れているばかりか、仁政を敷いているという面では、
昨今の諸将よりも抜きん出ている。
いかに秀吉が鉾を執れば無双、戦えば常勝の武勇があっても、刀剣の利は仁には勝らない。
となれば、最終的には味方が勝利するだろう。
それにとりわけ元春父子は、仁将の徳も勇将の名も古今の諸将に勝っている。
これを思えば、敵がたとえ一旦は勝に乗って大軍を率いて陣を敷いているといっても、
恐るるに足らず」皆はそう口々に言って、自分の陣へと帰っていった。

熊谷伊豆守の郎党に、戸谷志摩守と言って、命知らずの荒武者がいた。
戸谷は敵陣を見渡すと、「いかに秀吉の陣が堅固に用心していても、
わしが今夜忍び入って、大将の本陣のそばに火をつけてきてやるぞ」と言い出した。
仲間たちはこれを聞いて、
「秀吉は、人が皆、ゆくゆくは天下の主になるのではないかと噂しているほどの人物だぞ。
そんなに油断して、お前などに火をつけられるわけがあるか」と取り合わない。

戸谷は、「このうえとやかく問答しても意味がない。待っていろ。目に物見せてくれるぞ」と、
本当にその夜に敵陣へと忍び寄って、宣言どおり、本陣のそばに火を放った。
陣屋が四、五軒焼けた。

「熊谷の手の者、戸谷志摩、秀吉の本陣に火をつけて、ただ今罷り帰りましたぞ。
これほど油断なさっているなら、きっと不覚を取ることもありましょうな。
畿内や美濃・尾張の兵どもと同じだと思われるなよ。いろんな敵がいるものですぞ」
戸谷はさも声高に叫びながら走り帰ってきたものだから、人々は大いに騒ぎ、
「その男を討ち取ってしまえ」と言って追いかけてきたけれども、
あたりは真っ暗で、戸谷がどこに去ったかもわからなくなったので、
仕方なく陣屋の火を消すことに専念しようと、皆陣中へと入っていった。

こうして夜が更けていくと雪がひどく降り積もり、風が骨身にしみるほどに寒くなった。
元春様はこの夜のうちに芝土手を高く陣の前に上げ、柵の木を隙間なく結いめぐらせていた。
「明日は秀吉がこの陣に切りかかってくるだろうから、待ち受けて一戦し、ことごとく討ち取ってやろう」と、
夜中に陣の前に堀を作り、土手を築き、その上に柵を結び渡すと、
味方が突いて出る場所を二ヶ所開けて、敵が攻め寄せてくる道筋の雪をすべて払わせた。
すると京の一条・二条の大路のようになった。
夜回りは元長様と経言様が代わる代わる行った。

また秀吉は、「敵は小勢だからきっと今宵逃げていくだろう。絶対に油断するなよ。
追いかけてつくづく討ち取れよ」と下知をなし、斥候などを放った。

以上、テキトー訳。この章はここまで。

ハァン元春かっこいい……(*´∇`*)
誰もが絶体絶命と思う状況で、ゆったりと平常時のように袴姿でご飯を食べる。
「敵の奴らはかわいそうに、山の上で陣張ってるから寒いだろうなプププ」まで言っちゃうw
橋まで落としてやけくそかと思えば、しっかり抗戦の用意はしてる……
ちょっともうこれは惚れざるを得ない。
でもこれで「うちの大将ならダイジョブだよね」って思っちゃう国人衆、
あんたらみんな丸め込まれてどうすんのー!wwwww

あとね、信直さんがステキ。さすが信直さん。
元春のことちゃんとわかってて、信頼してる感がビンビンします。
婿大好きなお舅さん。
この義父子はもー、私のツボをこれでもかってくらいに突いてくれるなw
自分の子たちに婿自慢する親父ってのもなかなかいないぜ。
元長の初陣のときも、信直じいちゃんが後見してくれたんだよね。
勇む孫にデレっぱなしのじいちゃんだったなぁ。
その一方で、敵陣に忍び入って火付けしちゃうようなヤンチャくれどもをまとめてるすごい人なんだよね。
信直さん愛してる。

義父子といえば、益田越中守元祥も元春と義父子だね。
元春が元祥の舅なわけだが。
この婿さんもホントよくできた人でねぇ。
なんか親戚のおばちゃんみたいな心境になってきたwww

ああ、なんか前半は鳥取の余韻で切なさと焦燥感に苛まれたけど、
なんかダイジョブって気がしてきた。
私も丸め込まれたわwww

次も続きを読むよー。明日は更新無理そうだけど。
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