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2012-11-17

戦場のキャッキャウフフ(毎度の吉川衆)

だいたいの流れ:
上月城の勝久・鹿介を追い詰めていく毛利勢の前に、
後詰の秀吉、援軍の上方勢が着陣して、日に日に数を増していく。
元長は後詰勢に対して夜討ちを仕掛ける提案をするが、
隆景の「宇喜多の真意がつかめないから危うい」発言、
安国寺の「後詰を無視して城さえ落とせればいい」発言によって却下されてしまった。

さて、ではその肝心の城攻めはというと……というのが今回のお話。


上月の城中の忍者、台無を盗むこと

天正六年五月十四日、杉原播磨守の仕寄から台無(大筒)を仕掛けた。
城の矢倉に向かって撃ち掛けていると、たちまち隅の柱を一つ打ち破り、
中にいた吉田三郎左衛門尉は、細切れになって死んだ。
城中の者たちはこれに驚いて、皆塀の裏に穴を掘って身を潜め、
モグラのようになって身を縮こまらせていた。

鹿介は兵たちに、こう下知した。
「杉原は台無で水の手を遮っただけでなく、今また角の矢倉を打ち破った。
このままならば、この方面からそのうち打ち破られてしまうかもしれない。
城中の忍び働きに慣れた者たちは、ひそかに杉原の陣中に入って、
あの台無を深い谷へと撥ね落として来い。そして下に数十人で待ち受けておき、
この大鉄砲を拾って城中へと運んでくるのだ。
もしこの台無を取ることができれば、敵陣へとまっすぐに撃ち掛けて、まずは杉原の陣を打ち破ってやろう。
特に吉川衆の仕寄が間近に寄せられて、台無でひどく攻められているから、
城中から逆に散々に撃ち立てれば、この吉川衆の仕寄も一息つく暇すらないだろう。
城中の運を開くには、この台無を盗み取れるかどうかにある。
ああ、ぜひとも盗み取ってきてほしい。それをやり遂げた者には、莫大な褒章を与えるぞ」

忍術に秀でた者たちが、進藤勘介をはじめとして数十人忍び出ると、
夜半になってからひそかに杉原の陣に入っていく。
見れば、仕寄番の者たちは少々油断している様子だったので、そこへワッと叫んで飛び掛り、
台無をはるか谷底へとまくり落として、散々に切って懸かる。
仕寄番の者たちは思いも寄らないことだったので、たちまち切り立てられて退却したものの、
後ろに続いていた陣から、「夜討ちが入ったぞ」と呼び合って人が出てくると、
落ち着いて渡り合ってきた。
逃げてきた者たちを押し返して切り結んでいると、進藤勘介は敵一人に怪我を負わせ、
勘介とは名乗らずに「震動雷電助」と名乗り、散々に戦った。
しかし敵は大勢なので、どうにもできずに、さっと引いて城中へと帰っていった。

杉原の郎党たちは敵を追い散らした後に、そこにあったはずの台無がないことに気づいた。
「台無はどうした」と聞くと、「先ほどの夜討ちにまぎれて敵が盗み取っていったようだ」と答える。
「けれども軽々と持ち運べる獲物ではないから、きっとどこかに捨て置かれているだろう。
探してみよう」ということで、あちこちを探してみたものの、
どこにもないので、郎党たちは茫然自失していた。
杉原播磨守盛重はこれを聞くと「これは口惜しいことだ。
このような失敗をして敵に台無を取られたのでは、
盛重は生涯の面目を失うだけでなく、死後までも響く傷になる。
この鉄砲を奪い返すことができなければ、私はこの城を枕に討ち死にするしかない。
我が手の郎党たちも、一人残らず切り入って討ち死にしろよ」と、躍り上がりながら激怒した。
けれども、「まずは人に知らせず探してみろ」と、ひそかに探させた。

そのころ、今田中務・吉川式部少輔・香川兵部大輔は一つの陣屋に集まって夜話をしていたが、
陣の前を森脇石見守・井上肥前守の二人が一緒に通りかかった。
「あれを盗もうとしていたとは思いも寄らなかったが、どうやって盗んだのだろうな。
杉原はあれを盗まれては腹の虫がおさまらないだろうから、城中があれを手に入れたとはいっても、
杉原があっという間に乗り破ってしまうだろう。
小さな利益でずいぶん大損をしたものだ」と呟くのを今田らが聞きつけて、陣中から走り出ると、
「何があったのだ」と尋ねた。
森脇たちは、「それが、杉原の仕寄の台無を、城中の者たちが盗み取ったそうだ」と答える。
「それは取られたといってそのままでいいものではないぞ」と、今田中務ら三人は鑓を提げて走り出た。

と、城と味方の中間に、二、三百ほどの兵が一塊になって控えている。
香川兵部の郎党の三宅源允が「そこにいるのは誰の手の衆であるか」と尋ねると、
「私は杉原播磨守の郎党、壇上監物です。先ほど、台無を城中へと取られてしまいました。
これを取り返すか、さもなくばこれからこの城を乗り破るか、
そうでもなければ城の戸を枕にして討ち死にするか。
このなかのどれかをやり遂げて参ります」と答える。

香川兵部大輔が「さてそれは、敵はすでに引き上げてしまったのですか、
または追い払われたのですか」と問うと、
壇上は「敵はすぐに切り立てましたので、ほうほうの体で城中へ逃げ帰っていきました」と答える。
兵部が「追い立てられたのであれば、きっと台無はどこかに置いたままでしょう。
よくよく探してみてはいかがですか。拙速な攻撃は控えてください」と言っていると、
元長様から盛重へと軍使が遣わされてきた。
軍使は、「鉄砲を取り返すことができなければそのまま城に乗り込んでいただきたい。
後から元長が駆けつけます」と言ったので、播磨守は手を合わせて喜んで、
「あれを聞いたか。大将よりの仰せがあったぞ。
鉄砲を奪い返せなかったら、一人もここへは帰ってきてはならぬ」と下知し、
士気を鼓舞したので、杉原の手の者たちは皆切岸へつめかけ、
盛重からの一言の命を待って、一気に乗り破ろうと静まり返って控えていた。

三宅源允は主君の香川に遅れて、今田中務に付きながら急いでいたが、切岸へと走り上がり、
「吉川の手の者、今田中務である。ここまで攻め寄せて参ったぞ。
城中で我ぞと思わん者がいるならば出会え。勝負を決しようではないか」と声高に呼ばわった。
ややあって、城中から黒具足をつけた一人矢倉へ上がり、
「ただいま今田中務と名乗られた方はどこへ行かれたか。こう申す私は寺本市允と申す者です。
小兵ではありますが、一矢披露しましょう。
それを受けて、私の弓の制度をご覧ください」と言うや否や、弦の音も高く矢を放つ。
その矢は二宮木工助が鑓を持たせていた中間の肩から背中へとズンと突き抜けたので、
その中間は「あっ」と声を上げると鑓をどこかへ投げ捨て、谷の底へと落ちていった。

寺本は、「先ほどの矢は手ごたえがありましたぞ。もう一矢お見舞いいたしましょう」と、
また矢を取って番えて射出す。
今度は杉原の手の者で、具足をつける暇がなかったのか、腰白の帷子を着ていた者が、
その白い部分を狙われたのか、臍の下を背後まで射抜かれて、矢場に倒れてしまった。
そばにいた熊谷新右衛門は、「ああ、よくも射ったものだ。
寺本・亀井・鈴木の高館での弓の腕前は、
本間孫四郎が比叡山で二本の矢で二人を射抜いたのにも劣らない」と声を上げて褒め称えた。

杉原の手の者たちも、婿の吉田肥前守をはじめとして、残らず切岸に着いたので、
嫡子の弥八郎元盛・次男の又次郎景盛も続いて岸に付き、いよいよ城に乗り込もうとしていた。
三宅源允は走り回ってそのときを待っていたが、敵が台無に綱をつけ、
忍びやかに城中に引き上げようとしているのを見つけた。
荊の棘に引っかかってどうにも引き上げかねている敵に対し、
「台無はここにあったぞ。おのれら、一人も逃さないからな」と叫ぶと、切って懸かる。
この声を聞いて後からも味方が大勢駆けつけてきたので、
敵は大鉄砲を捨てて切岸を這い上がり、命からがら城中へと逃げ帰っていった。
杉原は台無を取り返して会稽の恥を雪いだようなきぶんになったばかりか、
今宵も命をつないだとほっとしたようだった。

こうして、三尺ほどある木の切り株に引っかかっているその台無の台座と筒口に縄をつけると、
一方を杉原の手の者の入江大蔵・その弟左衛門進が二人がかりで引いた。
もう一方は、今田中務・その弟の新見左衛門尉が、こちらも二人で引いたのだが、
いずれも劣らぬ力持ちだったので、今田が「えいや」と引けば台無は今田の方へ寄り、
入江がまた足を踏ん張り歯を食いしばって「やっ」と引けば、入江の方へと寄る。
双方とも負けじ劣らじと引き合った。
香川兵部大輔はこれを見て、「意味のない力比べをするな。
いつ敵が突いて出てきてもおかしくないのに、それに渡り合おうと備えるのではなく、
味方同士で腕比べしている場合か」と制した。

今田も入江も「もっともだな」と同じて、互いに「エイヤッ」と渾身の力を込め、
力を合わせて縄を引いた。
九鼎(夏の禹王が九つの州から金を貢上させて作った鼎)をも
羽毛のように扱うほどの大力なので、その木の切り株も堪えきれずにボコッと抜け、
ドッカと裂けて、大鉄砲と一緒に遥か谷底へと落ちていていった。
敵も味方もこれを見て、「なんと信じられない大力量だろう。
孟賁・ハンカイであろうとも、こんなことにはならないだろうに」と、
目を見開き肝をつぶして見物していた。


その後、この大台無を杉原の陣中に運び込もうとしたところ、筒口の方は侍が六人がかりで担いでいた。
台座の方は、入江大蔵がたった一人で持っていたが、それは軽々と持っていたそうだ。
なんという力持ちだろうと、人々は皆感心したという。


以上、テキトー訳。

これだよ! こういうのを待ってたよ! だから正矩好き!!!
自軍の落ち度を討ち死にすることで晴らそうという杉原さん。
どうでもいいけどアンタよく怒ってるな。かっこいいよ。
それで元長の伝令がな、泣かせんじゃねえか。
「後から駆けつけるから、思う存分戦ってね!」ってさ。
……そうだよな、戦うべきときに制される悔しさは、身をもって自分が一番わかってるもんなぁ。
杉原にとってもこれは、そりゃ嬉しいはからいだよねぇ(*´∇`*)

今田・経家・春継が仲良く一緒の陣でお話してるシーンもいい。
仲いいんだな~って思えて、胸があったかくなる。
考えてみると、もとからの吉川家臣で興経殺害後は毛利・元春に反発していた今田上野介の子、
吉川一族ではあるものの独立心旺盛だった石見吉川の嫡子経家、
元春というか熊谷氏関連で引っ張られてきたであろう、新参の春継……
この人たちが仲いいってのは、本当にじ~んとくる。

あと、敵の寺本にもちゃんと見せ場があるとこが楽しい。
肩から背中を射抜かれた人もアイタタタって思ったけど、
へその下射られた人はホントご愁傷さまでした(´人`;)ナムナムチーン

そんでもって、合戦には至らずに例の大鉄砲を無事奪い返すことができたわけだが、
今田と入江は何やってんですか。鉄砲挟んで綱引き?
まあ戦場で遊ぶのは、吉川衆の見せ場っちゃあ見せ場なんだよな。
読んでてすごく楽しい(*´∇`*)
春継が的確なツッコミ入れてるのもすばらしい。
ドリフのちょーさんみたいだね!

はぁ、今回の話でだいぶ気持ちがスッキリしたぜ。
上月編、まだ続くよー♪ヾ(。・ω・。)ノ゙
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