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2012-11-30

城と涙と男と女

年末に向かってあれこれ周囲が雑多な用事に溢れてきております。
寒い日々が続きますがいかがお過ごしでしょうか。
でもまぁ私、昨日はいい肉拝みに行ってたんだけどね(またプロレス)w

さて陰徳記、上月城を無事毛利が落としたとこまで進んだけど、
今回はその上月城え散っていった神西さんご夫婦の話のようだ。
すっごい長いよ! なので何回に分けることになるやら……


神西の女房のこと(1)

さて今回の上月で、あるいは討たれ、または自害した人々の妻たちは、
墨染めの衣に身を包んで泣く泣く故郷に帰る者もあり、
または高野山や粉川の奥に分け入って柴の庵を作り、しばしの間世を厭う者もいた。
なかでも特に哀れだったのは、神西三郎左衛門(元通)の妻であった。

神西は最期のときに臨もうとしたとき、女房を近くに呼んで、じっくりと暇乞いをした。
女房は泣きながら、夫に向かってこう掻き口説いた。
「私はあなたと初めてお会いしたときから、いろいろなことがありました。
あるいは敵に城を囲まれて鬨の声や矢の叫ぶ音に肝をつぶし、生きながら修羅道の苦しみを身に受け、
または兵糧が尽きて水が乏しくなったとき、飢えの悲しみに心を痛め、
餓鬼道の攻めを受けたこともあります。

けれども夫婦の道を離れてしまうのが何よりも悲しくて、
今まであなたに付き添い、片時も離れませんでした。
あなたを最後まで見届けることができるのは、宿生の縁も浅くなかった証拠なのだと、
嘆くなかにも喜びがあったものです。

だから、今ここで死に遅れてしまえば、これまで戦場の露霜に肌を傷め、
身を苦しめて付き添ってきたことも無駄になり、
来世まで一緒にいようという以前からの誓いも、嘘偽りになってしまいます。
それではあまりに悲しい。
私も同じ道に赴き、死出の山の険しい道、三途の川の早き流れも、
手に手を取って乗り越えて、同じ蓮の台の上に、半分ずつ分け合って座り、
来世も仲睦まじく暮らしたいのです。

伝え聞く遊子・伯陽は、月に誓って夫婦揃って二つの星になりました。
私たちも、妹背の心を変えなければ、来世も偕老同穴の契りを結んで、煩悩則菩提の縁を結べるはずです。
まず私を殺してからご自害なさってください」

女房がこう主張すると、神西は落ちる涙を押さえながら、
「嬉しいことを言ってくれる。
仰せのように、これまで見届けてくれたのは、睦まじい夫婦の仲とは申せ、
普通ならありえないほどのことだ。
敵に本国を追い出されてからは、知らぬ山辺の雨露に袖を濡らして身を痛め、
もの憂き船の旅枕、夢も見れない転寝に心を苦しめて、
この七年の間、私に寄り添ってくれたこと返す返すも忘れがたい。
名残も尽きなく思うから、できれば安養不退の浄土までも連れて行って、
比翼連理の誓いを実現させたいと思う。

しかしこれまでを振り返ってみると、大変な戦争を思い立って、今こうして籠城を遂げる身だというのに、
その最後まで妻女を伴っていたなど、人が噂でもしたら恥ずかしい。
新田左中将義貞は古今無双の名将だったが、勾当の内侍を山門や北国まで連れて行って、
最後までも一緒だったと言われたのは、末代までも武名の傷になった。
私もまた浮名を千年の後まで汚されるだろうことは想像に難くない。
それほどの気持ちがあるのなら、あなたはしばらく命を永らえて、
私の菩提を弔って一返の念仏でも回向し、一本の卒塔婆でも立てて、
私が修羅道へ赴く苦しみを助けてほしい。

会者定離のさだめなのだから、そんなに嘆くものではない。
最後の露や雫のように消え果てて、死に遅れたり先立ったりするのは世の習いだ。
電光石火に過ぎていく世の中なのだから、先立つのは昨日の夢、
遅れるのは今日の現実のようなもので、最終的には同じ道をたどり露と消える人の身なのだ。
しばしの別れなのだから、それほど嘆くようなことではない。
あなたの弟の森脇東市正は、元春に降参して所領もそれなりに与えられている。
彼を頼りにして、命を永らえてほしい」と諫める。

女房はこれを聞いて、「仰せはそのとおりですが、この浮世の有様を見るにつけ、
人の妻たる者は夫との別れを悲しんでみどりの黒髪を削ぎ落とし、衣を鈍色に染めて、
朝な夕なに仏に花を捧げ、黒木の念珠を指で繰りながら仏の御名を唱えています。
その様子は尊いように見えますが、年月が経てば心が浅くなっていくものです。
忘れ草ばかり生い茂り、仏への勤行もおろそかになるばかりか、
剃り落とした黒髪が生え揃わないといって悲しみ、朝な夕なにくしけずり、
顔には紅を絶やさないようになります。

それどころか、誘う水を待つような風情で、引く手あまたにでもなろうものなら、
徒名を流す後家は世に数え切れません。
やがて別の夫に添えば情も湧くものです。
別れた夫のことは露ほども思い出さず、ましてや別れたその日が巡り来ても
念仏の一返さえ唱えることもなくなります。

これは皆浮世の習いなのですから、あなたは今そのように仰いましたが、
御心のなかでは、私もまた世の人と同じようになると思っているのでしょう。恨めしいことです。
私は身がいやしくとも、貞女の道を守ろうという志だけは、
たとえ海が変じて山となったとしても変わりません。
けれども、こんな空しい浮世で長生きすれば、塩焼き海人の夕煙、思わぬ風に誘い引かれて、
証拠のない噂も立つことでしょう。
思うに任せぬ女の身ですから、命長ければ恥多しという古い言葉を
身をもって思い知るようなことにでもなれば、千度百度悔いても後の祭りでしょう。
ただあなたと同じ道に行きたい。

それに、弟の東市正は、敵方に降伏してしまいました。
忠臣は二君に仕えずと、昔から言い伝えられておりますのに、
人の臣たる道を知らない兄弟の振る舞いは、私の恥でもあります。
二度と顔を見たいとも思いません。
こんなことを言っていても意味がありません。とにかくお先に参ります」と、
そばにあった太刀を手に取って、今にも自害しそうになった。

神西は「なんということをするのだ」と袂にすがり、
「今回夫と死に別れるのはあなた一人だけではない。
また昔から、いったいどれだけの人が戦場で討たれてきたか。
けれども、女が自害したという例は聞かないぞ。どうか思いとどまってくれ」と制した。

女房はこれを聞いて、
「夫婦の別れの悲しさは、人の嘆きと自分のことを同じに考えてはいけません。
深く悲しむか嘆きもしないか、それはそれぞれ人によって違うものです。
人が嘆かないからといって、私が悲しまないわけではありません。
春になって、一様にやわらかな光がさしても、柳は緑を深くし、花は紅の色を含むようになります。
それに、昔から夫と死に別れた女が自害したことはないと仰いますが、それも違います。
昔の小宰相の局は通盛が討たれたと聞くと、千尋の水底に身を沈めました。
これはどうなるのですか。
古い例がないわけではないのですから、私も刃を身に触れさせます」と、刀の鞘を外そうとする。

神西は、「どうか落ち着いてくれ。
夫と死に別れて自害すれば、あなたは確かに貞女の道を守った類まれな人だと、
その名を雲まで聞こえるほどに上げるかもしれない。
しかし私は、最期におよんでまで女を連れて行ったと言われ、武名は苔の下に朽ちてしまう。
それは悲しい。

同じ道に行こうと言ってくれるのも、私への思いが深いからこそだ。
けれども私の名を朽ち果てさせたなら、あなたの気持ちはかえって私を傷つけることになる。
それほどの気持ちであるならば、どうか衣を墨に染めて、私の後生をよく弔ってくれ。
それならば、あなたが貞女の道を守りたいという心にもかなうだろう。
それに私亡き後も、武名が朽ちることはない。
どうか私が言うことをよく聞いてほしい」と、涙ながらに掻き口説き、
刀を奪い取って郎党たちを多く差し添えると、
きちんと言い聞かせてから城を追い出し、自身は腹を切ったのだった。


以上、テキトー訳。ツヅクノデス……

女房、強いな……男の方が袂にすがったりすんのかよなにそれときめく。
神西夫婦は、けっこう互いに我が強いというか、
女は女で自分のために自害しようとするし、男は男で自分のために女房の自害を止める。
「あなたのために」とかおためごかしを言わないのは、
少々物足りない気がしつつも、妙に潔いような気がしてくるw

女房が神西について戦場にとどまったのも、神西のためじゃなくて自分のためだもんな。
こういう強欲というか、意志を貫こうとする姿勢はなかなか好感が持てるね。
身の回りにいたらだいぶ厄介だけどwww

神西、泣き落としと実力行使でどうにか女房を止めて、
やるべきことを仕果たしたわけだけど……実はここからが長くて、
先は毎度おなじみ、正矩お得意の仏教話などが延々と続きそうな気配。
女房が絡んでるから、だいたい女人成仏の話だろうなって予想はつくね。
あー、気が滅入る_ノ乙(.ン、)_
でもまぁちょっとずつがんばるんば……
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