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2011-09-30

化け物退治は定番なのか?

というわけで見つけた。
面白そうな話があるじゃないの。
もう夏は過ぎてしまったので怪談というのも時期はずれだけど、
怪談というよりは冒険譚のようなものなので、別にいいか。

ちなみに主人公は毛利家中の人ではない。


塩冶興久化け物を切ること(上)

塩冶宮内太輔興久は不孝・不義の人ではあったが、心栄えは大変勇敢で、
戦えば勝ち、攻めれば落ちないことはなかった。
この人が勇猛であることを示す、こんな話がある。

月山富田城の甲の丸に、桜の間、柳の間という部屋があって、
そこは狩野小法眼による柳桜の絵で埋め尽くされていた。
鬼神もその絵に深く魅せられたようで、その部屋は魔物の出る部屋となった。
何百人もの人が、そこで化け物にたぶらかされ、あるいは気違いになりまたは行方知れずとなってしまった。
次第に、そこに近づく者はいなくなった。

塩冶はこれを聞いて、
「なに、そんなことがあるものか。見る人間が怯えるからこそ、
見えるはずのないものが見えたり視界を遮るような気がするのだろう。
一翳眼に在れば空華乱墜す(そうかもしれないと思ってしまえば、
眼の中の翳りのように妄想が次から次へとわいてくる)と言うではないか。
吹毛剣について珊瑚枝上の月光を愛でるような心持ちであれば、
化け物などどうして現れることがあろうか。
吹毛剣は怜悧な霊光を放って外道天魔といえども手出しができないのではなかったか。
私がその変化の者をこらしめてやろう。きっと古狐か古狸が化けているのだろうよ」と、
たった一人でその部屋に向かった。

上座に胡坐をかいてあかあかと明かりを灯して待ち受けたが、
宵のうちはとりたてておかしなことも起こらず、
ようやく午前三時くらい(丑三つ時)になって、風がそよそよと吹いた。
風は気持ちの悪い冷たさで、しきりに胸騒ぎがするので、興久が「これは不思議なことだ」と思っていると、
庭に散り積もった木の葉をハラハラと踏みしだく足音がした。
垂木(軒先の渡し木)の上にドスンと上がった音がしたと思うと、すぐに妻戸がキリキリと押し開かれる。
「さあ、例の古狸めが、人をたぶらかしに来おったな。ほかの者はどうあれ、この興久は化かされないぞ」と、
外のほうをじっと睨みつけていると、歳は八十を越すかと思われる老婆が姿を現した。

まるで曲がりくねった茨が雪に埋まっているかのような頭髪で、上のほうで結った髪をカッと乱し、
目は鏡を額にかけたようにたった一つだけあって、太陽や月よりもなお明るく光っている。
鼻は長く垂れ下がり、歯は黄色くて上下に長く生え違い、ことさらに両脇の牙は鋭くて、剣樹のようであった。
唇は真っ赤で血の池のようであり、口は左右の耳まで裂けて、息をするたびにすさまじい煙が風にほとばしる。
両腕に猪のような毛がびっしりと生え、爪は鷹のように長く曲がっている。
破れた麻の衣を着て、大きな竹の杖をつき、十一、二歳くらいの童子二人に手を引かれて、
ヨロヨロと近寄ってくるのだ。

「ああ苦しい。老いて衰えることほどつらいものはない。
これでも十六歳になるまでは、華のかんばせと評判で、
楊貴妃の眉よりも西大后の紅顔よりも美しかったというのに。
朝には鏡に向かい眉を書いて容貌を磨き、暮には鳳のかんざしを取って
蝉翼(蝉の羽のように美しく曲げ整えた髪)に仕上げて優美な容色に整えたものじゃ。
いつのころからか老いが日々重なってゆき、容貌が衰え体がだるくなっていくばかりでなく、
孤独で貧しい身の上じゃ。肌を隠す衣もなく、朝晩食べるものにも事欠く有様で、
砂を噛んで水をあおるほかに、飢えを紛らわす方法もありはしない。
ああ苦しい。めまいがする。胸も苦しいぞえ」と、
しわがれ声を震わせて「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と呟く声が聞こえた。

さしものつわもの興久も、身の毛もよだつほど恐ろしく感じたが、少しも騒がずにいた。
この老婆は興久をキッと見て、「おやおや、こんなところに殿御がいらっしゃる」と、かしずいた。

「さてさて、お若い御大将、ようこそここにいらっしゃいました。
ここにはこの老婆が折りにつけて参っておりますので、人は皆、
『老いさらばえた老女の顔の醜いことよ、聞き苦しい言葉つきよ』などと言って、私を怒らせたものです。
それだけでなく、このごろは一人としてこの座敷に近づきません。
この老婆も、年老いて心細くなってまいりましたので、いっそう人恋しく、
昔話の一つも誰かに語って聞かせたいと思っておりました。よくここにいらっしゃいましたなぁ。
昔の迦葉仏のときのことまでよく知っている老婆でございますよ。朝まで昔語りをして差し上げましょう」と
老女が言っても、興久は返事もしなかった。
大きく開いた目でじっと老女を睨みつけている。

老女は「この殿御もこの老婆の面相が醜いと思っているのじゃろう。声をかけても返事すら返さぬとは。
おまえたち、行ってあの方の御足を揉んで差し上げなさい」と、傍らにいた童子に命じた。
一人の童子が「かしこまりました」と老女のそばを離れ、興久の足元に座った。
興久はこの童子を斬ろうと思ったが、「待てよ、どんな化生の者といっても、
私の力なら、殴るだけでも眩暈がすることだろう」と思いとどまり、
拳を堅く握って童子の頭をしたたかに打った。
すると童子は老女の元に走り帰って、「ばばさま、あの方が殴ってきました」と泣きつく。
老女はもう一方の童子に「ならばおまえが行ってまいれ」と命じ、この童子も興久に近寄ってくる。
興久は少しも怯えていないところを見せてやろうと思ったのか、「童よ、ここに来い」と声をかけた。
ソロソロと寄ってくる童子を引き寄せ、膝の上に抱きかかえると、大きな石のように重い。
たまらず童子の頭を続けざまに二度打って、乱暴につかむと「えいやっ」と放り投げた。

老女はこれを見て「こんなにいたいけな子供たちに、なんと思いやりのないことをするのですか。
お恨みいたしますぞえ」と怒ってつかみかかってくる。
「これはかの有名な三途の川の脱衣婆か、安達が原の黒塚に棲むという鬼が現れたのに違いない。
そうでなければ山姥というものだろう」と、興久は魂が抜けそうなほど仰天した。
真っ黒な手を伸ばして頭をつかもうと飛び掛ってくるところを、
それでも少しも声を上げずに、腰に挿していた初桜という刀を抜いて、
眉間と思しきところを、二度続けて斬りつける。

「アッ」という声がしたと思うと、辺りが雷のように光って、老女と童子たちは虚空へと姿を消した。


以上、テキトー訳。後半へ続く。

仏教用語どころか、意味不明も甚だしい禅の公案引っ張ってくるんじゃねーよ(泣)。
「吹毛剣~」のあたりはマジで訳せないっす。
強引に訳したところで、余裕で意味がわからないっす。
「吹毛剣とはどんなものですか」と聞かれた僧が「月に照らされた珊瑚がキレイじゃのー」と答える。
この真意はいかに?っていう禅の問答(公案)らしいが・・・知るか!!
まあおそらくー、たぶんー、「そんなありもしないモン気にしなさんな」ってコトなのかね?
吹毛剣てのは、刃の上に置いた髪が、息を吹きかけるだけで切れてしまうほどの切れ味鋭い剣のことだそうな。
そんな刃物、あってたまるか。

この時代でも、妖怪とか信じない人がいたんだねー。
と思ったが、興久さん、狐や狸が人を化かすとか、三途の川とか、安達が原の鬼とかは信じてるのね。
安達が原の鬼ってのは、在原業平がさらってきた姫を横取りしちゃった奴だっけ?
まあいいや。

もう一つ、面白いなーと思ったのは、この老婆の妖怪、なんとモデルがいるっぽい。
平安時代の末期に流行した説話に「零落小町」というのがあるらしい。
玉造小町という人が、若いころは美しくて評判で結婚の申し込みが引きも切らなかったが、
17歳のときに親が死んでからはすっかり落ちぶれて、
日々食べるものにも困り、着るものもなくて、見苦しい姿に成り果てたというお話。
世の無常を強調した物語だね。
これが「宇治拾遺物語」なんかに収録されているらしい(読んだことない)が、
この「陰徳記」での老女の独り言で、ほぼそのまんま流用されてるみたいね。
なぜそう思うかというと、わからない言葉をググってたら、
「零落小町」に行き当たって、ほぼそのまんまの文章がヒットしたんだな。
パクリ?というのとは違うんだろうが・・・和歌の本歌取りみたいな一種の技法なのかな。

そうそう、この主人公、塩冶(えんや)興久さんは、尼子経久実子で、塩冶に養子に入った人。
生粋のの尼子家中にもかかわらず、敵対する大内傘下に入り、父親に反逆したので、
冒頭で「不孝・不義の人」とひどい言われようをされている。

次回、化け物オババたちの正体が明かされる!?
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