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2011-11-12

美しさが留まるところを知らないッ! 宇喜多母

前回のあらすじ:
宇喜多家からの人質として上洛した宇喜多母の美しさを耳にした秀吉は、
一目見たくなって呼び寄せようとするも、仮病を使われことごとく振られる。
そこで備前出身のコニタンにお鉢が回り「脅してもすかしてでも連れて来い」ということに。


宇喜多秀家の母のこと(3)

小西は件の女房の乳人で小侍従という女に接触した。
「どうか殿(秀吉公)のお心に任せて、一度はご登城してくだされ。
東西南北の諸将から差し上らされた人々(人質)は皆、殿に謁見しております。
お盃を下されるというようなことではなく、通り一遍の挨拶程度だということです。
いったい誰が申し上げたのか、ご病気だというのは嘘だと殿のお耳に入り、
たいそうご気分を害されております。
もしも、さらに病が重くなったなどといって謁見を拒むのであれば、
ご当人の立場が悪くなるばかりか、御子の秀家にも累が及びましょう」

小西のこの言を聞くと、その女房は
「私がここまで来たのも、あの八郎に国を保たせ身命を全うさせるためです。
我が子が滅びることに比べたら、この身など千々に引き裂かれても、露ほども恨みには思いません。
ましてやたった一度殿にお会いするなど、簡単なことです。
一刻も早く参りましょう」と決心した。

しかし、住み慣れた故郷を離れ、波路もはるかな船の中で心を痛め、慣れない旅の憂鬱さに、
その身も痩せ細り、容貌も衰えてしまったと気後れして、なかなか出発できずにいる。
そこで侍女が助け起こしても、力なく、今にも消え入ってしまいそうな有様で、
風に乱れる女郎花の露が重ねてなびきかかり、
周囲の垣根を身の支えにじっと立つ姿は、なおさら儚げだった。

同じ女の身でさえも、一つの布団に枕を並べたいと感じた侍女は、
秀吉公がお心を尽くして呼び寄せたがるのも実に道理だと思うのだった。

こうしてかろうじて輿に乗り、「楽を聚(あつ)む」などと名付けられた宮殿の中に入って、
幸蔵主に取り次がれた。
幸蔵主は非常に喜んで、このことを殿に告げると、殿は「急ぎここに連れてまいれ。対面しよう」と言う。
幸蔵主が付き添って長い渡殿を過ぎ、一間もある障子を押し開けて、
「こちらへお入りください」と、後ろの戸をぴたりと閉めて部屋の明かりが少々揺らぐ。
屏風の表には、春の夜が仄々と明けてゆき、山に咲き乱れる花は散りもせず咲き残りもせず、
松風が霞を吹き払う合間から、有明の月が高山の雲に傾きかかる様子、
自分の故郷に帰る雁の声が名残惜しげな有様が、筆の限りを尽くして描かれている。

しかし女房はこれを眺めるにも心ここにあらず、
「雁でさえも自分の慣れ親しんだこの世の春を思い出して
都の花の盛りさえも見捨てて帰ろうとするものなのに、
それに引き替えて私は、住みなれた故郷の春に背を向け、
遠くの見知らぬ高貴なところに来て、見慣れぬ人にひなびた姿を見られるとは、
なんと恥ずかしい」と思い出して、涙ばかりこぼれて紛らわしかねる有様だった。
周囲にいた人も、そんな姿がいたわしく思え、涙を誘われるのだった。

殿は待ちかねていた嬉しさに、「昔は袖に
(うれしさを昔は袖につつみけり こよひは身にもあまりぬるかな『和漢朗詠集』?)」と口ずさんで、
妻戸をやおら引き開けて出てきた。
その女房を一目見ると同時に、思いがけない衝撃を受けたようだ。
年齢は盛りを少し過ぎてはいるが、見た目は二十歳より五つか六つばかりしか越えていないように見える。
顔の色は艶やかで、眉の辺りがほのかに影がかかり、色っぽく優雅な可愛らしさもある。
側面の髪がはらはらとこぼれかかるのを慎ましやかに掻きやることもなく、
をさかりはの隙より見給へるまみの艶にやさしき有様(訳断念)、
青柳の糸の乱れがちな木の間から、霞がかる夜の月がほのぼのと姿を現す様よりも
なおうっとりするような顔つきだった。

殿が聞いていたよりも優れたその美しさに、
「昔は物を思わざりけり
(逢ひ見ての後の心にくらぶれば むかしは物をおもはざりけり『小倉百人一首』)」
と詠んだ人の心まで、今の身の上に思い知らされるようだ。
胸もふさがり、心もよろめいて、その女房の袂にすがって、胸を焦がす想いの丈を伝えたいと思う。
しかしこんな出会いがしらに、あっという間に風雅を壊してしまえば、
軽率な態度だと女が軽蔑するかもしれないと、必死で心を鎮めようとする。
「えやは伊吹のさしも草
(かくとだにえやはいぶきのさしも草 さしも知らじな燃ゆる思ひを『小倉百人一首』)」
と独りごち、溢れる涙に袂を湿らせた。

どうしても堪えなければならない想いというわけでもないので、
浮名が立つなら立て、せっかく逢えたのだからと思い直した。
「今回の対面はなんと素晴らしいことだろう。
今日からはここに留まって心を慰めなさい。
慣れていても旅というものはつらいものだ。
それこそ住んでいた故郷が懐かしく、親しい人たちを恋しく思うだろうに、
ここでは仮の住処が五条の辺りというではないか。
建物もしっかりしていない小さな家だろうから、花の都とは言いながら、
軒から漏れる露に袖を濡らし、板の隙間から吹く風に身を震わせ、旅のつらさが増しているだろう。

ここにはあなたと同じように国許から上らされた女房はいくらでもいる。
互いに悲しいこともつらいことも語り合って、慰め合いなさい。
わしもあなたのことを粗略にはしない。
藤の裏葉のうらとけて(春日さす藤の裏葉のうらとけて君し思はば我も頼まむ『源氏物語』)……」
と言いかけて、殿は内に入ってしまった。


以上、テキトー訳。まだもうチョイ続く。

うーん、これは……ハトよめとか言ってスンマセンした!
宇喜多母はアレだな、女帝ボア・ハンコック(ワンピ)な感じだなきっと。見た目が。
よし、脳内補正完了!
同性の女が押し倒したくなるほどのイイ女……ゴクリ。
てゆーか、男×男も一般的な一方、女×女もよくあったって聞きかじった気がするけどどうなんだろうね。

この章は、わりとマジで私なんぞの拙訳を読むより、原文読んだほうがイイ。
筆がノリにノッてる。読んでてテンポがよくて楽しい。
意味がわからなくても、言葉の響きとかがなんともなまめかしい。
「あへかなる」とか「にほひたる」とか、現代語にはない趣があるよなぁ。
「陰徳太平記」だとどうなってるんだろう。後で確かめてみよう。

そして読んでるうちに、自分の身に驚きの変化が。
秀吉がかわいくなってきた。
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